Un sentimento -the after-

 ソファに埋もれ、バーナビーはいくらなんでも性急すぎたといまさらながらに後悔していた。
 確かにそう。ずっと気にはなっていた。
 最初はなぜおじさんと組まなきゃいけないのかと憤慨したものだ。
 だが、一緒にいるうちにいろんなものが見えてきた。
 どんなふうに考えているのか、なぜヒーローなのか。一途なその心も知った。
 知って、そしてバーナビーの心の中には何かが生まれた。
 はじめて知る”恋”
 人にされることはあっても、自分でするのは初めてに近い。いや、初めてだろう。
 好意を向けられることに慣れてはいるけれど、自分からはどうしていいのか分からない。
 そして何より厄介なのは、虎徹を見ていると身体の奥底から湧き上がってくる蹂躙したいという危ない思考。
 シャワーブースで言った「ぐちゃぐちゃにしたい」というのは本心だ。
 小さくため息を零し、バーナビーはサングラスを外して目頭を押さえる。
 こうして目を閉じて浮かび上がってくるのは、虎徹のあられもない痴態。
 女性ではないから、身体のラインは固いし、今まで抱きなれてきた柔らかさなんてものは全くない。
 腐ってもヒーロー。おじさんだなんだとからかうが、その筋肉は大したもの。腹筋だってしっかりきれいに割れている。
 だが、その硬さがイイと思ってしまうのは、もう末期だろう。
 胸は…そう。無駄な肉などなかった。筋肉はあったが。
 小さな突起は、普段はあることさえ忘れてしまうほどささやかなのに、指で押せばしっかりと主張してきた。
 ついそれが楽しくて、いやらしくて、何度も何度もつついてしまった。
 その時の虎徹の顔といえばもう、たまらなかった。悔しいのに、身体だけは素直に気持ちいいのだと訴えている。戸惑いと驚きと羞恥が綯交ぜになったあの表情に、つい下半身に熱が集まってしまった。
 あれだけ敏感なのだから、きっとそのうち、胸だけで達してしまえるようになるかもしれない。
 いや、そうなるようにしてしまえばいいのだ。
 何度も何度もいじり、そして胸でイくまでやめない。ずっとずっと刺激を与え続ければいいのだ。
「そう。これっきりになんてさせませんよ」
 誰もいない部屋、バーナビーは静かに零す。
 虎徹のことだ。きっと明日からバーナビーから逃げ出そうとするに違いない。
 顔を合わせずらいとばかりに、避けて避けて避けようとするだろう。
 もうそんなことは分かり切っている。
 だが、逃がしはしない。
 さすがにやりすぎたと、バーナビーだって途中で止めたのだ。
 本来ならば、虎徹の腰を掴んでその楔をおもっきり叩きつけたかった。
 虎徹の中に潜り、中の感覚を味わい、すべて中に出したかった。
 それをストップさせたのは、バーナビーの心に残るわずかな良心。
 さすがにそこまで行くと、虎徹に鉄拳ぐらいくらっていただろう。
 痛いのはできれば避けたい。虎徹に殴られるのであれば、それはそれで構わないが、だからと言ってもう二度と抱けないのじゃ意味がない。
 何度も何度も、これからも抱く。
 そのためには、急ぎすぎてはだめだ。
 今日の感触からいって、たぶんまだ大丈夫。避けられるかもしれないが、軽蔑はされないだろう。それなら大丈夫。
 こんなに「独占したい」と思わされるのは、虎徹が初めてだ。
 いい年をしたおじさんに欲情して、みっともなく襲いかかれるほど、バーナビーは虎徹に狂っている。
 できることなら閉じ込めておきたいくらいには、虎徹にほの暗い情を寄せている。
 この手で啼かせたいのだ。
 そう。まだまだこれから。
「虎徹さん…僕はあなたを手に入れます」